高次脳機能障害2
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高次脳機能障害2

不幸にも交通事故により重症脳外傷となった場合、奇跡的に治療によって意識を回復することができたとしても、残念ながら完全な回復まで至らず、脳に後遺症が残ることがあります。例えば、運動麻痺などの身体の障害や視力や聴力等の感覚の障害が生じることもあれば、認知障害や人格変化などの高次脳機能障害が生じることもあります。

 

交通事故による脳の後遺症の中でも、(高度の場合を除く)高次脳機能障害は見落とされやすい障害です。高次脳機能障害は、高度になれば常時介護が必要となり障害を有する状態と判断しやすいものになりましょうが、基本的には見えないものであり、外見から判断が困難なものです。また、社会に出てから初めて気づかれることもあり、この障害により様々なトラブルが生じているものの、それが高次脳機能障害によるものであるとなかなか気づかれないケースもあります。周囲の人に障害があることを理解してもらえなければ、ますます問題は深刻化し、トラブルが起こり人間関係を悪化させるなど、見えにくい障害ゆえに、周囲の人に戸惑いが生じます。また本人の病識も欠如していることがあり、それゆえ本人もより一層戸惑うことになります。

 

高次脳機能障害は脳の機能に障害が生じるものであり、短期間で治るものではないようです。しかし、周囲が障害を理解し環境を調整する、つまり周囲の人々が変わることは短期間でも可能です。周囲の人々が変わることで、高次脳機能障害者の生活を変化させることはできます。このことからすれば、高次脳機能障害の支援は、本人のみになされればよいといえるものではなく、家族など本人の周囲の人々に対するものも重要といえるでしょう。また、高次脳機能障害という障害は、長い期間をかけて変化するものともいわれています。このような本人、周囲の努力の積み重ねが、本人にとっていずれ良い方向への変化をもたらすことも可能であると、私は信じています。

 

さて、私の暮らす島根県においても、平成19年4月から高次脳機能障害の相談支援を行なう拠点が設置されたように、近年、高次脳機能障害の支援体制が整備されてきました。

 

高次脳機能障害者の支援を考えるうえで、医療・福祉の連携を欠かすことはできないでしょうし、高次脳機能障害者の権利擁護の必要性も生じます。権利擁護としてよく取り上げられるものとして、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業があります。「高次脳機能障害支援コーディネートマニュアル(高次脳機能障害支援コーディネート研究会/監修 、中央法規出版 、2006年6月発行)」という本があり、この本は高次脳機能障害者の支援を考える上で、とても参考になる本です。当書籍でも、権利擁護として成年後見制度や地域福祉権利擁護事業が紹介されています※。

※「財産・金融に関わる権利擁護の必要性が示された。例えば、本人の自覚がないところで闇金融業者から借金を重ねたために多額の返済を迫られている例や、本人の知らないうちに預貯金を他人の口座に移された例等である。このような財産・金融に関わる権利擁護のための制度には、地域福祉権利擁護事業と成年後見がある。・・・・」(高次脳機能障害支援コーディネートマニュアル276頁より)

 

財産の管理等について、双方とも、問題発生を事前に防ぐために重要な制度です。しかし、成年後見制度、地域福祉権利擁護事業によって、すべての問題が解決できるわけではないく、医療費の補助、公的年金制度や労災保険、自動車保険、生命保険等経済的な保障が必要となるときもあれば、トラブルが生じたときには状況に応じた適切な対処が必要になります。このような場合には、例えば法的なトラブルが生じた場合には弁護士の支援であったり、社会保険上の問題であれば社会保険労務士、交通事故の損害賠償では弁護士、交通事故の後遺障害等級認定の分野では行政書士の支援といった、それぞれの専門家のサポートが必要となることがあります。

 

高次脳機能障害者の支援体制は、医療や福祉以外の、各種専門的サポートが必要となる場合まで視野に入れたものであるべきと思います。これについて、各領域において無料相談を実施する団体・機関が増えており、必要に応じ無料相談を利用すればよいという意見もありますが、必要とするサポートが様々な専門領域にまたがるため、どの専門家の支援が必要なのか当人たちが判断に困ることもあります。このような場合には、誰かがその状態に気づいてあげなければ、必要なサポートを受けられないまま、不利益を強いられる時間が流れることになります。当事者が制度の存在を知らなかったがために必要なサポートが受けられなかったなどということがないように、医療・福祉野分野、成年後見制度、地域福祉権利擁護事業に限らず、その他専門分野においてもサポートできる体制が整備されること、これが理想的であると考えます。

 

また、交通事故による高次脳機能障害者では、経済的な保障において、交通事故の事案では、多くの事案で自動車保険が最も大きな役割を果たします。交通事故による高次脳機能障害の支援を考えるうえでは、自動車保険の支払いで不利益を被らないようにすべきことも忘れてはならないでしょう。

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