高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害は目に見えにくい障害であるということ
高次脳機能障害は、見えない、外見からはわかりにくい、社会に出てから初めて気づかれるなどの、目に見えにくい障害です。また、高次脳機能障害を持つ人には、IQが高い人はたくさんいること(ただし、IQが高いからといって社会生活上の問題が生じにくいというわけではない)、進行性ではないことなどが、認知症とは異なるようです。
高次脳機能障害の症状について
高次脳機能障害の症状について、いろいろな文献を見てみますと、失語、失行、失認など巣症状があげられていることもあれば、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害があげられることもあります。高次脳機能障害の症状が多様であることがわかります。
例えば、自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会報告書(2007年2月)では、脳外傷による高次脳機能障害について、典型的な症状は 多彩な認知障害、行動障害および人格変化であるとして、次のとおり説明されています。
「① 典型的な症状 ― 多彩な認知障害、行動障害および人格変化
認知障害とは、記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害などで、具体的には、新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができない、などである。行動障害とは、周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理できない、職場や社会のマナーやルールを守れない、話が回りくどく要点を相手に伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をすることができない、などである。人格変化とは、受傷前には見られなかったような、自発性低下、衝動性、易怒性、幼稚性、自己中心性、病的嫉妬・ねたみ、強いこだわりなどの出現である。 なお、これらの症状は軽重があるものの併存することが多い。」
高次脳機能障害の症状のうち比率の高いものは、記憶障害、注意障害、遂行機能障害の3つであるという調査結果があります。この3つの症状の中でどれがあることにより重症化に直結するとはいえないようです。ただし、これらが複数併せ持つことによって重症度が増す傾向があるようです。
また、高次脳機能障害のみの場合もあれば、例えば、「びまん性脳損傷の場合…小脳失調症、痙性片麻痺あるいは四肢麻痺の併発も多い。これらの神経症状によって起立や歩行の障害がある事案においては、脳外傷による高次脳機能障害の存在を疑うべきである。」と自賠責の報告書においても指摘されているとおり、身体機能の障害を併せて持つ場合も多々あるといわれています。
さて、高次脳機能障害者を家族に持つ方と話をしていたとき、そのご家族が高次脳機能障害者になってから眠りの深さや眠りのタイミング等、眠りの質が独特ばものになったということを聞かせていただいたことがあります。おそらくは、脳損傷の方の多くに見られるとされる、神経疲労の一つのあらわれ方なのでしょう。当事者の方々からは、書籍では得られない貴重なお話を聞かせていただくことが多く、様々なことを学ばせていただいております。