自賠責保険等で対象となる後遺障害とは
自賠法施行令2条1項1号では、後遺障害を「傷害が治つたとき身体に存する障害をいう」と定義していますが、後遺障害とは何か、これを簡潔に過不足なく説明しようと思うと、一見簡単そうで、しかし、考えてみると実はなかなか難しいものです。
書籍・新型・非典型後遣障害の評価での説明では
新型・非典型後遣障害の評価(羽成守編著・新日本法規・2005)3頁では、「「後遺症」と「後遣障害」は通常同様の意味で用いられることが多い。」としつつ、「あえてその差を説明するとすれば、後遺症とは、自動車事故等による傷害の治療が医学的に終了した後に残存する多彩な症状を示す概念で、それら後遺症を一定の基準で選別抽出し、労働能力の全部又は一部の喪失と結合させた概念が後遣障害であるといえる。」と説明されています。後遺症を一定の基準で選別抽出するということから、後遺障害は後遺症よりも狭い概念ということになります。
国土交通省の自賠責保険(共済)ポータルサイトの説明では
また、国土交通省の自賠責保険(共済)ポータルサイトでは、後遺障害について「自動車事故により受傷した傷害が治ったときに、身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態のこと」と説明します。自賠責保険等において後遺障害として対象となるものについて、「傷害と後遺障害との間に相当因果関係が認められ、かつ、その存在が医学的に認められる症状をいい、具体的には自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二に該当するもの」と説明されています。
※自賠責保険等とは自動車損害賠償責任保険及び共済のことです。
とりあえず、対象となりえるものとして
そこで、とりあえず、ここでは、自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二に該当するものが対象となりえる(なる、ではなく、なりえる、です)、としておきます。なお、このサイトでは自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二について、「自賠責の後遺障害別等級表」と記載します。
自賠責保険等から後遺障害の等級が認定された場合、その方には該当する等級の支払限度額までの保険金が支払われることになります。自賠責の後遺障害別等級表において、第1級から第14級までの格付けがなされ、各障害がそれぞれの等級に配列されています。
また、等級表の備考6には「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。」と記載されます。これにより、この等級表に具体的に掲載されている障害以外についても、その程度に応じ、規定の障害に準じて後遺障害の等級が認定されることがあります(自賠責保険において「相当」と呼ばれるもので、労災保険では「準用」と呼ばれています)。なお、これについては、「ある身体障害が障害等級表上のいかなる障害の系列にも属さない場合」と、「障害等級表上に、その属する障害の系列はあるが、該当する身体障害がない場合」の2種があります。