症状固定の判断
症状固定とは?
症状固定とは、一定期間の適切な治療を加えたにもかかわらず、これ以上治療の改善効果が期待できない時期または状態のことをさします。では、症状固定が到来したか否かは、どのように判断がなされるものなのでしょうか。『賠償科学概説-医学と法学との融合-(日本賠償学会編/民事法研究会/2013)』の143頁は、医学的な事実を前提にするけれども、これだけで決定されるものではなく、被害者側の回復に向けての努力や自己によるダメージの受容といった社会的、個別的な事情をも加味して決定されるもの
と説明されています。ここからすれば、症状固定の判断にあたっては、まずは医学的事実が前提とされること、そして、それのみならず、被害者本人の事情や社会的事情等の諸事情も考慮されうるということを理解することができます。
症状固定の判断
事故発生から数ヶ月が経過し、加害者側の保険会社から症状固定を迫られたという話を聞くことがあります。事案ごとにそれぞれの事情がありますので、必ずしも加害者側の保険会社の主張が間違っているわけではなく、ときに症状固定の判断は難しいものとなります。しかし、症状固定の判断は、様々な事情が考慮されるにしても、その前提は、まずは医学的な事実であるべきです。担当医が医学的な判断もって治療の必要性があると判断する状況において、真に治療が必要と考えられる場合においては、治療を継続すべきであり、治療は打切られるべきではありません。
担当医が医学的な判断をもって治療の必要性があると判断される状況においては、治療を継続すべきであり、治療を打切るべきではありません。症状固定の判断の前提となるものは、第一には医学的な事実であるべきです。それを前提にしながら、様々な要素を加味して妥当な時期が判断されるべきと考えます。
医学的な判断のもと治療の必要性が認められる状況での治療の打ち切りの主張は、医学的な事実を欠いた、不適切な主張であると考えます。それに対し、医学的な判断のもと交通事故の治療に一区切りをつけると判断された状況において、被害者が加害者に治療費の支払いを主張し続ける場合は、加害者側から治療費支払いの拒絶が主張されても、それはやむを得ないことと考えます。ただし、症状固定後は、もはや治療を受けることができないということではありませんので、実際に痛み等があり、自己負担(ただし、保険診療の自己負担分ということになるでしょうが)でその対処を求めることは、何ら咎められることではありません。