総合的な判断の重要性
因果関係と医学的な評価、将来においても回復困難ということ
後遺症の状態が「自賠責の後遺障害別等級表」のいずれかに該当する(または相当する)ものであったとしても、ただちにその症状が後遺障害として認定されるとは限りません。なぜならば、後遺障害として認定されるためには、交通事故による受傷によって生じたものでなければならないからです。また、その存在が医学的に認められるものでなければならない、ということも忘れてはならないことだといえます。
このとおり、交通事故による後遺障害として認定されるためには、交通事故による受傷との間の因果関係が求められ、そして医学的な評価を要することから、後遺障害の判断は後遺症状だけに着目するのではなく、症状の推移、治療の経過や治療の内容、各種画像所見や検査など諸事情から総合的に判断する必要が生じます。
また、後遺障害という言葉からは回復困難な状態が想像されるように、症状固定後すぐに回復するような症状まで後遺障害と認定されるのは不適切といえます。そこで、症状固定とされた時点で将来においても回復が困難と見込まれるのかという判断も、後遺障害を判断する一つの要素となります。
自賠責保険等で対象となる後遺障害とは?参考となる記述
「医療機関向け解説書の概要について-後遺障害等級認定に必要な医療情報-」(財)日弁連交通事故相談センター東京支部『民事事故交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2000年版』の自算会のころのものですが、大内健資氏の講演録に、自賠責の後遺障害等級認定を理解するうえで、とても参考になる記述があります。
この講演録の中で、後遺障害等級認定は「受傷時から症状固定時に至るまでの症状の推移あるいは治療経過、治療内容、画像所見などをもとに総合的な調査を行い判断」するとし、また「受傷時からの症状に一貫性や連続性が認められるかが重要」とし「一貫性や連続性が認められるものであるならば、症状固定とされた時点で将来においても回復が見込めないものか、症状の存在を医学的に認めることができるか、最後に、障害の程度は後遺障害等級表に該当するかなどを総合的に判断する」と説明されています。この説明は、自賠責保険等で対象となる後遺障害とはどのようなものなのか、これを考えるうえで、とても参考になります。