後遺障害診断書の費用負担2
後遺障害等級認定の申請を行うためには、後遺障害診断書の取得が必須です。後遺障害診断書の費用負担は、現在のところ、後遺障害等級認定結果によって異なるものであり、後遺障害等級非該当の場合は、被害者がその費用を負担するのが一般的といえる状況にあります。
さて、交通事故判例速報No.586において、後遺障害診断書の取得費用に関する興味深い判例が紹介されておりました。後遺障害が残存しないと判断された事案において、後遺障害診断書の取得費用が損害として認容されたものがあるようなのです。
交通事故判例速報No.586によりますと、大阪高等裁判所平成26年11月21日判決では後遺障害診断書が「症状の推移を客観的に立証する有用な資料であることから、本件訴訟に必要なものといえ、この支出を余儀なくされたことも本件事故の損害というべきである。」ということで、後遺障害が残存しないと判断された事案において、後遺障害診断書の取得費用が損害として認容されたということです。
なお、第一審である神戸地裁平成26年6月25日判決においては、「後遺障害について自賠責保険において非該当とされ、本件においても後遺障害に関する損害を主張しておらず、後遺障害診断書は本件の立証に必要な資料ということはできないから、本件事故による損害と認めることはできない。」と判断されております。
後遺障害が残存しないと判断された事案においても後遺障害診断書の取得費用が損害として認容された事例として、大阪高等裁判所平成26年11月21日判決は大変興味深いものだと思います。
それでは、この判決が出たことにより、今後、自賠責保険等での後遺障害診断書の取得費用の取り扱いが変更されると期待してよいものなのでしょうか。ここで、注意すべきは、大阪高等裁判所平成26年11月21日判決は「本件訴訟に必要なものといえ、この支出を余儀なくされたことも本件事故の損害というべき」とされているように、訴訟での立証のために必要な資料であったことから損害として認めるべきと判断されていることです。このことからすれば、自賠責保険等における後遺障害診断書の取得費用の取り扱いに大きな変更が生じるわけではなさそうです。