高次脳機能障害の症状固定について
高次脳機能障害の症状固定について
高次脳機能障害について、症状固定の判断は、一般的な身体的障害の場合に比べ、その判断が難しいといわれています。高次脳機能障害の症状固定の判断においては、医学的な事実以外の要因の影響が他の障害に比べより大きなものとなります。
例えば、吉本智信先生は『賠償科学概説-医学と法学との融合-(日本賠償学会編/民事法研究会/2013)』中の「高次脳機能障害問題 第1節 医学からのアプローチ」において、高次脳機能障害者の症状固定については身体リハビリに半年程度かけ、2年程度は高次脳機能の回復が期待できることから、その時点、つまり2年程度で判断することが妥当
とし、さらに小児などについては復学まで待ち社会的に判定することも必要
と説明されています。そのうえで、結局のところ、社会的診断というが、社会に一応復帰の可能性のある場合、学校での状態、会社での状態を見るという社会の診断に委ねるしかないのかもしれない
と追記されています。
自賠責保険の報告書の記載
「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)において、高次脳機能障害の症状固定については、次のとおり説明されています。まず、成人被害者については後遺障害診断書に記載された時点と捉えることで通常の妥当性の確保は可能
としつつ、小児、高齢者についてはやや柔軟に取り扱うことが妥当
とされています。小児は、本来は乳児は幼稚園、幼児は就学時まで、等級評価を行わないことが妥当と考える
とし、高齢者については加齢による症状の変化を勘案し、外相治療終了後の合理的な期間内に症状固定として取り扱うことが妥当である。高齢被害者には、加齢に伴い、時間が経過すると障害が重篤なものとなっていく事例がみられる。このような場合、事故と高次脳機能障害発生に因果関係が認められれば、症状固定後の症状悪化についても、交通事故との因果関係を否定できない場合がある。しかしながら、症状悪化の原因として、被害者の加齢による認知障害の進行が同時に存在していることが多いので、その事も考慮すべきである。
とし、その上で自賠責保険の障害認定手続きにおいては、症状固定後一定期間が経過し、状態が安定した時点の障害程度をもって症状固定とし、障害認定を行う。
と説明されています。